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最高裁判所第二小法廷 昭和39年(オ)156号 判決 1967年7月21日

上告人

丸山俊一

右訴訟代理人

兼子一

若林信夫

山本松男

被上告人

丸和商事株式会社

代表者

対馬小太郎

右訴訟代理人

杉之原舜一

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人兼子一、同若林信夫の上告理由、および上告代理人山本松男の上告理由四点について。

原審の挙示する証拠によれば、本件調停調書・更正法定および原判示の各登記のなされるにいたつた経緯に関する原審の認定は、これを是認することができる。右の事実によれば、本件調停調書(更正決定前の旧条項による甲一号証の一)の「訴外佐藤から上告人に本件建物所有権を移転する」旨の記載は、原判示の経緯のもとに登録税節約等のため契約当事者によつて特に意識してなされた意思表示を記載したものであるから、かかる意思表示の合致として確定され調停調書に記載されたものと認めるべきである。したがつて、右の旧条項を甲一号証の二の新条項(更正決定)のように「佐藤は中川商事株式会社に仮登記の本登記をなし、中川商事は亀田を経て上告人に本件建物所有権を移転する、そして登記は中間省略により中川商事から上告人宛にする」旨訂正することは、民訴法一九四条の全く予定してもいないものであつて、右の更生決定は確定しても効力を生じないと解するのが相当である。けだし、更生決定は調停調書の記載内容の同一性を阻害することなく表現上の瑕疵を訂正することを制度上の目的とするものであるところ、本件における旧条項(甲一号証の一)と新条項(同号証の二)とは、権利移転の経緯および態様において本質的に異なり到底同一性を認めえないものであるから、旧条項を新条項に訂正するごときは、旧条項の実質的内容を変更するにほかならないからである。この点に関する所論は独自の見解であり、原判決に所論の違法は存しないから、所論は採用することができない。

上告代理人山本松男の上告理由第一点ないし第三点について。

所論の点に関する原審の認定および判断は、挙示の証拠によりこれを是認することができる。所論は、ひつきよう、原審の右認定にそわない事実を前提として原判決を非難するに帰し、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)

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